ウクレレの歴史|ポルトガルからハワイへ、名前の由来と広がり

公開:2026-10-03 最終更新:2026-10-03 運営:asobilab

ウクレレは、ハワイを代表する小さな弦楽器です。けれど、ハワイでゼロから生まれた楽器ではありません。もとになったのは、ポルトガルの島から海をこえて運ばれた楽器でした。このページでは、1800年代の終わりごろから、ハワイ王国との関わり、20世紀の広がりまでを、資料で確認できた範囲でたどります。

ウクレレは、もとはポルトガルの楽器だった

ウクレレのふるさとは、大西洋にうかぶポルトガルのマデイラ島だと、雑誌の記事は説明しています[4]。この島の人々が使っていた小型のギターのような楽器が、ウクレレの先祖です。メトロポリタン美術館は、その楽器を「braguinha(ブラギーニャ)」と紹介しています[1]。雑誌の記事は、「machete(マシェテ)」と「rajão(ラジャオン)」という2つの楽器の名前を挙げ、ボディや指板はmachete、調弦はrajãoから来たと説明しています[4]。

ウクレレのもとの楽器ポルトガルのマデイラ島のmacheteとrajãoという2つの楽器が、ホノルルの職人の工夫でハワイのコア材を使った楽器になり、ウクレレになったという流れの図。ウクレレのもとになった楽器(ひとつの説明)machete(マシェテ)ポルトガル・マデイラ島ボディの形と指板rajão(ラジャオン)同じ島の楽器調弦のもとホノルルの職人が工夫して作るハワイのコア材を使用(1880年代)ʻukuleleウクレレ
図2 ウクレレのもとになった楽器。ボディや指板はmachete、調弦はrajãoから来たとする説明[4]。美術館は、もとの楽器を「braguinha(小型ギター)」と紹介しています[1]。

呼び名が資料によって少しちがう理由は、この記事では確かめられていません。ここでは、ひとつに決めずに、資料ごとの言い方を並べました。

1879年、ラヴェンズクレイグ号で海をわたる

1879年8月、ラヴェンズクレイグ号(Ravenscrag)という船が、マデイラ島からホノルルに着きました[2][3]。この船には、契約労働者として427人が乗っていたと、雑誌の記事は書いています[3]。到着の日付を8月23日とする資料もあります[2]。

乗客の中に、のちにウクレレの最初の作り手として知られる3人の職人がいました。マヌエル・ヌネス、アウグスト・ディアス、ジョゼ・ド・エスピリト・サントです[1][2][3]。3人はマデイラ島の木工の職人で、楽器の作り方を知っていたと説明されています[1][3]。なお、別の情報サイトは職人を4人としており、人数の数え方には資料による差があります[10]。

ウクレレの歩みの年表1879年にポルトガルのマデイラ島の職人がホノルルに到着し、1880年代に楽器づくりを始め、1915年の万博、1920年代と1950年代のブームを経て、2000年代に再び人気が出たという流れ。ウクレレの歩み(確認できた範囲)1879年マデイラ島から職人3人がホノルルへラヴェンズクレイグ号で到着[2][3]1880年ごろ最古級とされる楽器(美術館所蔵)メトロポリタン美術館の所蔵品[1]1880年代3人がホノルルで楽器をつくり売る始まりの年は資料で差がある[2][3][5]1888年まで地元向けの製作が広がる[1]1915年サンフランシスコの万博で注目[5][6]ハワイの演奏がきっかけとされる[7]1916年ハワイでカマカ社が創業[8]1920年代アメリカ本土でブーム[7]1950年代テレビ番組でふたたびブーム[7]2000年代ネットの動画で人気が戻る[9]※補助資料のみ
図1 ウクレレの年表。出典で確認できた出来事だけを載せました。年の数え方は資料により少しちがう場合があります(本文参照)。

年表の「1880年代」の項目には注意が必要です。楽器づくりを始めた年は、資料によって書き方がちがいます。ある資料は、1880年にヌネスが最初の工房を開いたと書きます[5]。別の資料は、ヌネスが1884年には家具職人、1885年には楽器(machete)をつくる人として広告を出し、1889年にはギターの製作者として載ったと書きます[2]。雑誌の記事は、1885年までに3人がホノルルで店を開いたとしています[3]。この記事では、まとめて「1880年代」としました。

ハワイで、新しい楽器になる

では、だれがウクレレを発明したのでしょうか。雑誌の記事は、「ウクレレを発明した人はいない」と書いています[3]。この100年ほどのあいだに「自分が発明した」という主張が繰り返されてきたものの、実際には、マデイラ島の楽器が少しずつ変わっていったのだ、という見方です[3]。一方、ヌネスの楽器のラベルには「ウクレレの発明者」と書かれていたと紹介する資料もあります[2]。

変わったところのひとつが、材料です。ポルトガルの楽器にはトウヒやネズなどの木が使われていたのに対し、ハワイでは、ハワイ産のコアという木が使われるようになったと説明されています[3][4]。美術館の資料では、1880年ごろにつくられた楽器が最古級の1台として所蔵され、1888年までには、3人が地元向けにウクレレをつくっていたとされています[1]。

名前の由来には、諸説ある

「ウクレレ」は、ハワイ語の言葉です。ʻukuはノミ、leleは跳ぶという意味で、合わせて「跳ぶノミ」を指すと説明されます[6]。この言葉は、楽器がハワイに来る前からあったと書く資料もあります[4]。では、なぜ楽器にその名前がついたのでしょうか。

名前の由来の説ウクレレはハワイ語でノミと跳ぶを合わせた言葉で、跳ぶノミの意味。名前がついた理由には、パーヴィスのあだ名説、指の動き説、女王の解釈説の3つが伝わっている。「ウクレレ」という名前ʻuku(ノミ)+ lele(跳ぶ)= 跳ぶノミ説1 人物のあだ名エドワード・パーヴィスのあだ名とする説(職業の書き方は資料により異なる)説2 指の動き弾く指のすばやい動きがノミが跳ぶようだったとする説 説3 女王の解釈リリウオカラニ女王が「遠くから来た贈り物」と解釈したとする説 
図3 名前の由来には諸説あり、どれが正しいかは決まっていません[1][5][7]。

伝わっている説は、おもに3つです。ひとつめは、宮廷にいたエドワード・パーヴィスという人物の「あだ名」だったという話です。ただし、この人物を、美術館は「宮廷音楽家」[1]、大学の資料は「イギリス人の船乗り」[7]としていて、書き方が一致しません。大学の資料は、これを「伝説」としています[7]。ふたつめは、弾く指のすばやい動きが、ノミが跳ぶように見えたという説です[1][5]。みっつめは、リリウオカラニ女王が、この言葉を「遠くから来た贈り物」と解釈したという説です[5]。

どれも決め手になる確実な資料が見つかっていないため、この記事では「諸説ある」とだけ書きます。ウクレレ情報サイトも、ウクレレにまつわる言い伝えの多くは、本当のところがわからないまま失われている、と書いています[10]。

ハワイ王国とのつながり

ウクレレが広まる上で、ハワイ王国のカラカウア王の存在はよく語られます。美術館は、カラカウア王が宮廷でこの楽器を後押しし、フラの演奏と結びつくことで、楽器が文化の中に根づいたと説明しています[1]。大学の資料も、王がこの楽器を広めたと書きます[7]。雑誌の記事も、王が宮廷の集まりなどで演奏し、受け入れられる助けになったと説明します[4]。

ただし、王が具体的に何をしたのか(自分で演奏したのか、職人を保護したのか、といった細かい点)は、この記事で開いた資料の範囲では、はっきり確かめられていません。「王が支えた」という大づかみの説明までを、確認できた範囲としておきます。同じ大学の資料は、最初の名手として、エルネスト・カアイを紹介しています[7]。

20世紀に、世界へ広がる

アメリカ本土の人が、ウクレレを大きく意識するきっかけは、万国博覧会でした。スミソニアン博物館の記事によると、アメリカの人々が最初にウクレレに出会ったのは、1893年のシカゴ万博とされます[6]。1915年のサンフランシスコのパナマ太平洋万国博覧会では、ハワイ館が人気となり、ウクレレ熱が加速しました[6]。ハワイ館には、1日に約3万4000人が訪れたと推定されています[6]。1916年の初めには、大きな音が出るバンジョーウクレレも生まれました[6]。

ハワイの楽器づくりも続きました。1916年にサミュエル・カマカがカマカ社を創業し、1928年には楕円形のウクレレの特許を取りました。この形は、のちにパイナップル型として知られます[8]。

1920年代には、大衆演劇の演奏家などを通じて、アメリカ本土で大きなブームになりました[7]。1950年代には、アーサー・ゴッドフリーのテレビ番組が、2度めの人気を生みました[7]。一方で、1970年ごろには、ハワイの外では「めずらしい楽器」になっていたと、大学の資料は述べています[7]。2000年代には、インターネットの動画をきっかけに、人気がふたたび高まったと説明されます[9][10]。

いま、練習するときにつなげて考える

歴史を知ると、いま使うウクレレの特徴も見えてきます。標準の調弦はGCEAで、4弦のGが高い音になる「高いG」の並びです[9]。ウクレレはじめ帳の練習ページでも、この調弦に合わせています。小さなボディ、4本の弦、明るい響きは、長い旅の中で形づくられてきたものです。

歴史は、弾くために必須の知識ではありません。ただ、「なぜ4弦が低くないの?」のような疑問が出たときに、少し先をのぞく手がかりになります。

よくある疑問

ウクレレは、ハワイで生まれた楽器ですか?

楽器のもとは、ポルトガルのマデイラ島の小型ギターです[1][4]。それがハワイで工夫されて、ウクレレになったと説明されています[1][3]。

名前の由来は、はっきりしていますか?

いいえ。「跳ぶノミ」という意味まではわかっていますが、なぜ楽器につけられたのかは諸説あり、決着していません[1][5][7]。

だれがウクレレを発明したのですか?

特定の1人とはいえない、という見方があります[3]。3人の職人の名前がよく挙がりますが、1人が「発明した」と断定できる資料は、確認できていません。

ウクレレは、いつ日本に来ましたか?

この記事で開いた資料では、確かめられませんでした。そのため、ここには書いていません。

参考にした資料

  1. The Metropolitan Museum of Art「Ukulele, Hawai'i」(および同館の解説ページ)(1879年ごろ、マデイラ島の入植者がbraguinhaを持ち込んだこと、職人3人の名前、1888年までに地元向けに製作していたこと、1880年ごろの最古級の楽器であること、カラカウア王とフラ、名前が「跳ぶノミ」で2つの説があることを確認)
  2. Ukulele Hall of Fame Foundation「Manuel Nunes」(1879年8月23日にラヴェンズクレイグ号でホノルルに着いたこと、1884年に家具職人、1885年にmachete製作者、1889年にギター製作者として記録があること、「ウクレレの発明者」のラベルを確認)
  3. Ukulele Magazine「When the Ukulele as We Know it Arrived in Hawaii」(ラヴェンズクレイグ号の乗船者数、3人の職人、1885年までの店舗、「ウクレレを発明した人はいない」という指摘、コア材の使用を確認)
  4. Ukulele Magazine「The Birth of the Ukulele」(マデイラ島が故郷であること、macheteとrajãoの関係、コア材とトウヒ・ネズの対比、名前が楽器より前からあった言葉であること、カラカウア王の後押しを確認)
  5. Smithsonian National Museum of American History「5 things you probably didn't know about the 'ukulele」(1879年の到着、1880年の最初の工房、名前の3つの説、1915年の万博を確認。リリウオカラニ女王が楽器を国の楽器に定めたという記述も同記事にあるが、確かめきれないため本文には書かず)
  6. Smithsonian National Museum of American History「Itching to see the jumping flea: The great 1915 ukulele craze」(ʻukuがノミ、leleが跳ぶ、1893年シカゴ万博、1915年のハワイ館の来場者推定、1916年のバンジョーウクレレを確認)
  7. ハワイ大学システム「An Ukulele Comeback」(Malamalama誌、2007年。パーヴィスの伝説、カラカウア王、エルネスト・カアイ、1900年代の万博と1920年代のブーム、1950年代のテレビ、1970年ごろの状況を確認)
  8. Kamaka Hawaii「Our Legacy」(楽器メーカーの公式ページ。1916年の創業、1928年の楕円形ウクレレの特許とパイナップル型の由来を確認)
  9. Wikipedia「Ukulele」(補助資料。標準調弦GCEAと高いG、2000年代に動画でふたたび人気になったことを確認)
  10. ukutabs「ウクレレの歴史」(ウクレレ情報サイト。補助資料。1879年の到着、1915年の万博、1920年代のブーム、2000年代の再ブーム、言い伝えの多くが失われているという記述を確認。職人を4人とする点は他の資料と異なる)

この記事について:上の10の資料のページを実際に開いて、書かれている内容を確かめました。美術館・博物館・大学・楽器メーカーの資料を中心にしましたが、年や人数の数え方は資料ごとに少しちがいます。ちがいがある点は本文に書きました。ハワイ王国時代の公的な記録(王室や政府の文書)は、直接確認できていません。ウクレレの日本への伝来、名前の由来の決着、カラカウア王の具体的な役割も確認できていないため、断定していません。年表の図は、本文で出典を示した出来事だけを使っています。専門家の監修は受けていません。内容に誤りがあれば、お知らせください。

歴史を知ったら、いざ弾いてみる

音合わせから「かえるのうた」、コード伴奏まで、順番に練習できます。

ウクレレはじめ帳で練習する

あわせて読みたい

読みもの一覧へ