九九のあとに待っているもの|わり算・筆算・分数への橋渡し
九九を覚えたら、それで終わりではありません。九九は、そのあとに学ぶわり算やかけ算の筆算で使う「道具」になります。このページでは、学習指導要領で九九のあとに何が、どの学年で出てくるのかを確かめて、九九とのつながりと、家庭でできる準備を整理しました。
学習指導要領で見る「九九のあと」
学習指導要領(平成29年告示)の算数では、九九は第2学年の内容です[1]。そのあと、学年が上がるにつれて、次のような内容が出てきます[1]。
- 第3学年:除法(わり算)の意味を学び、わる数と商がどちらも1けたの計算が確実にできるようにします。かけ算では、2けたや3けたの数に、1けたや2けたの数をかける計算を学びます。分数の意味や表し方も、この学年です。
- 第4学年:わる数が1けたや2けたで、わられる数が2けたや3けたの場合のわり算を学びます。正方形と長方形の面積の求め方も、この学年に置かれています。
- 第5学年:分母のちがう分数のたし算・ひき算を学び、通分や約分の考え方が出てきます。
解説の目次でも、第3学年に「2位数や3位数に1位数や2位数をかける乗法」と、「除数と商が1位数の場合の除法」が含まれていることが確認できます[5]。また、解説をまとめたサイトには、乗法九九は、以後の学年で扱う乗法や除法の計算の基盤となるものとして必要だと書かれています[4]。
なお、同じ学年の中での単元の順番は、教科書によって違います。ここでは学年の区切りだけを見てください。
わり算:九九を逆から使う
わり算(除法)には、意味が2つあります。解説をまとめたサイトによると、12÷3 を例にすると、12個のあめを1人に3個ずつ分けて、何人に配れるかを求める場合と、12個のあめを3人に同じ数ずつ分けて、1人分を求める場合の2つです(言い方は筆者がかみくだきました)。前者は「3×□=12」の□を求める場合、後者は「□×3=12」の□を求める場合にあたります[3]。
どちらも、かけ算の式で言いかえられるので、九九がすぐ出ると答えが見つかります。第3学年のわり算は、「48÷6」や「13÷4」のように、乗法九九を1回使って商を求められる計算とされています[3]。13÷4 は、4×□が13以下で、13にいちばん近くなる□を探す計算です[3]。4×3=12 なので、商は3、あまりは1になります(計算は筆者)。
かけ算の筆算:九九を位ごとに使う
第3学年のかけ算の筆算について、解説をまとめたサイトは、2けたや3けたの数に1けたや2けたの数をかける計算が、乗法九九などの基本的な計算をもとにできることを理解させる、としています。たとえば 23×4 は、23を20と3とみて、20×4 と 3×4 に分ける考え方です。これは筆算の仕方につながる考えとされています[2]。かける数が2けたのときは、たとえば 23×45 を 23×40 と 23×5 に分ける、と説明されています[2]。
図3のように、20×4=80 と 3×4=12 をたすと、23×4=92 です(計算は筆者)。分けたあとの一つひとつの計算が、また九九でできているのがわかります。九九がすぐ出ると、この作業が楽になります。
分数・面積・約分:どこで九九が出てくるか
分数の意味と表し方は第3学年、正方形と長方形の面積は第4学年、約分と通分は第5学年に置かれています[1]。
第3学年の分数は、等分してできる部分の大きさや端数の大きさを表すのに分数を使うこと、分数が単位分数のいくつ分かで表せることを知る、という内容です[1]。たとえば、1/4が3つ分で3/4、という見方です。この「1つ分の大きさ × いくつ分」という見方は、かけ算の考え方と似ています(筆者の気づきです)。
これらの単元で、九九がどう使われるかを、学習指導要領や解説が直接書いている箇所は、今回の確認では見つけられませんでした。そのため、以下は筆者の考えです。長方形の面積は「たて×よこ」で求めるので、かけ算の式を使います。約分は、たとえば 6/8 を、分子も分母も2でわって 3/4 にする計算です。6は2×3、8は2×4と九九で見えると、2でわれることに気づきやすくなります。九九が身についていると、考えることに集中しやすい場面が増えると考えられます。
ベネッセの解説記事も、計算が楽になると算数への抵抗感がなくなったり、文章題で解決の見通しが立ちやすくなったりする、と説明しています[6]。
家庭でできる準備
ここからは、一般にいわれる工夫です。研究で効果が確かめられたものではありません。お子さんに合いそうなものだけ、試してください。
答えから式を探す
わり算が「かけ算を逆から使う」ものなので、「24は、何の段の答え?」と聞いてみます。24は 3×8、4×6(入れかえて 8×3、6×4)の答えです(筆者の計算)。わり算の式を習う前に、答えから元の式を探す練習をしておくイメージです。お風呂や移動中の、ちょっとしたクイズでできます。
「分ける」お話をつくる
「あめが12個あります。3個ずつ分けると何人分?」と、生活の中で聞いてみます。図2のように、絵や具体物で分けてみると、「3×4=12」とのつながりが見えやすくなります。
数を位ごとに分けて見る
2年生では、簡単な場合の2位数と1位数のかけ算も学びます。解説をまとめたサイトでは、これは第3学年で2位数や3位数のかけ算を考えるときの土台になる学習とされています[4]。「23は、20と3」のように、数を分けて見る遊びが、あとの筆算の準備になると考えられます。
「速さ」について
解説は、九九を十分に習熟して確実に計算できるようにすることを大切にしています[4]。一方で、「何秒で言えれば次に進める」といった基準は、確認した資料には書かれていませんでした。速さを競わせるより、「考え込まなくても出てきた」という実感を少しずつ増やすほうが、続けやすいと考えられます。
よくある疑問
九九がまだ不安なまま、3年生になりそうです。
学校の授業は、3年生でも九九を使いながら進みます[3]。不安な段があれば、担任の先生に伝えて、学校での様子を聞いてみてください。つまずきやすい段については九九が覚えられない子の悩みも参考にどうぞ。
わり算が苦手なのは、九九のせいですか?
九九が影響する場合はありますが、それだけが原因とはいえません。わり算では、九九のほかに、分ける場面の意味や、あまりの考え方も学びます[3]。どこで止まっているのかを、ノートやテストで確かめるところから始めてください。
かけ算の筆算で、まちがいが多いのですが?
筆算では、位ごとに九九を使うので、まちがいの原因が九九のこともあれば、位をそろえて書くことや、くり上がりのこともあります。ノートを見て、どの計算で止まっているのかを一緒に確かめてみてください。九九が原因のときは、その式だけを短く練習する方法があります。
九九表を見ながら、わり算の練習をしてもいいですか?
表を見ながら「3×□=12」にあたる□を探す練習をして、わり算の考え方に慣れる方法があります(一般にいわれる工夫です)。九九を言えるようにする練習とは別に、考え方を練習する時間と考えると、気持ちが楽になるお子さんもいます。
わり算を先に教えておいたほうがいいですか?
先取りが良いか悪いかを比べた資料は、今回確認できていません。学校でわり算を習う前の準備としては、答えから式を探す遊びや、ものを分ける体験くらいで十分と考えられます。
参考にした資料
- 文部科学省「小学校学習指導要領(平成29年告示)第2章 各教科 第3節 算数」(第2学年の乗法九九・簡単な分数、第3学年の乗法・除法・分数の意味、第4学年の除法と正方形・長方形の面積、第5学年の通分・約分が、それぞれの学年に置かれていることを確認)
- 学習指導要領ナビ.jp「【小学校 算数】第3学年の内容(A数と計算:乗法)」(平成29年告示の解説をまとめたサイト。2・3位数に1・2位数をかける乗法が乗法九九などの基本的な計算を基にできること、23×4を20×4と3×4に分ける説明、23×45を23×40と23×5に分ける説明を確認)
- 学習指導要領ナビ.jp「【小学校 算数】第3学年の内容(A数と計算:除法)」(除数と商がともに1位数の除法が乗法九九を1回用いて商を求める計算であること、48÷6・13÷4の例、12÷3の2つの意味と□を求める式との関係、あまりの説明を確認)
- 学習指導要領ナビ.jp「【小学校 算数】第2学年の内容(A数と計算:乗法)」(乗法九九が以後の乗法・除法の計算の基盤となること、九九に十分習熟し確実に計算できるようにすること、簡単な場合の2位数と1位数の乗法が第3学年の素地になることを確認)
- 文部科学省「小学校学習指導要領(平成29年告示)解説 算数編」(目次で、第3学年に「2位数や3位数に1位数や2位数をかける乗法」「除数と商が1位数の場合の除法」が含まれることを確認。本文の全ページは読めていません)
- ベネッセ教育情報サイト「スマホ時代でも九九は大事?2年生で学ぶ理由とその効果とは?」(2025年10月6日公開。計算が楽になると算数への抵抗感がなくなる、文章題で解決の見通しが立ちやすくなると説明されていることを確認。調査データは載っていませんでした)
この記事について:上の資料のページを開いて、書かれている内容を確かめて書きました。ただし、解説(算数編)のPDFは本文を最後まで読み込めなかったため、目次で確認できた部分と、解説をまとめたサイト[2][3][4]の記述を使っています。分数・面積・約分の単元で九九がどう使われるかは、直接書いた資料を確認できておらず、本文は筆者の考えです。「13÷4=3あまり1」「23×4=92」「24=3×8=4×6」は自分で計算した数字です。同じ学年の中の単元の順番は、教科書で違うため調べていません。家庭の工夫は、一般にいわれるもので、効果が研究で確かめられたものではありません。専門家の監修は受けていません。内容に誤りがあれば、お知らせください。