九九が覚えられない子の悩み|苦手になりやすい段と対処法
「2の段や5の段は言えるのに、7の段で止まってしまう」。九九のつまずきは、多くのお子さんで起こりうることです。このページでは、ベネッセの調査などを確かめて、つまずきやすい段、混ざりやすい理由、家庭でできる工夫、学校に相談するときの目安を整理しました。
つまずきやすい段は、調査でどう出ているか
ベネッセ教育総合研究所の「小学生の計算力に関する実態調査2013」は、2013年2月下旬〜3月下旬に、全国の公立小学校15校の1〜6年生7,827名を対象に行われました[1]。報告書の2年生の乗法九九の結果では、正答率の低い段は6・7・8の段で、乗数(かける数)で注意が必要なのは4・7・8だと書かれています[2]。いちばん多かった誤答は、6×8と8×6、6×7と7×6の式でした[2]。
もう一つ、2025年7月のベネッセの調査があります。約1,240人の子どもについて、九九の各段の習熟度を「すぐできた」「できた」「少しつまずいた」「つまずいた」で調べたものです。記事によると、1・2・5の段は約90%以上が「すぐできた」「できた」で、7・8・9の段は習熟度が低めでした[3]。対象の学年や調べ方は、記事には書かれていません。
2つの調査は、時期も対象も測り方も違うため、数字を直接比べることはできません。ただ、どちらでも7・8の段は、つまずきやすい側に入っています。6の段(2013年)や9の段(2025年)は調査によって分かれました。おおまかには「6〜9の段のあたり」でつまずきやすい、といえそうです。ベネッセの別の記事でも、誤答が多かった九九に6・7・8の段が多く含まれると説明されています[4]。
調査の数字を読むときは、次の点に気をつけてください。
- 「低め」は「できない」という意味ではありません。ほかの段と比べて、という意味です。
- 2013年の調査は2〜3月、つまり年度の終わりごろに行われました[1]。2年生が九九を学んだあとの結果と読めます(筆者の読み取りです)。
- 調査に参加した学校や子どもは、全国のすべてではありません。お子さんにそのまま当てはまるとは限りません。
なぜ、混ざりやすいのか
2013年の報告書は、4・6・7・8が関係する式で正答率が低かったこと、「し」と「しち」などの混同がみられたことを書き、言葉で唱えるときの言い間違いが原因と思われる、としています[2]。たとえば図2のように、「ししち」「しちし」「しちしち」は、音がよく似ています。ベネッセの別の記事でも、4(し)と7(しち)の音の混同が、間違いの理由の一つとして挙げられています[5]。
ベネッセの記事では、つまずきの原因として、覚える式が81個と多いこと、「はっぱ」「さざんが」のようになじみのない言い回しであること、逆の順番で使うときに覚え方が足りないこと、が挙げられています[4]。
つまり、「頭が悪い」「努力が足りない」といった話ではなく、九九という覚えものの性質上、似た音や大きな数でこんがらがりやすい、ということのようです。
九九は「きまり」でも支えられる
学習指導要領の解説では、九九は暗記だけでなく、きまりを使ってつくるものとされています。かける数が1ふえると答えはかけられる数だけふえること、かける数とかけられる数を入れかえても答えが同じことが、九九の構成に生かされると説明されています[6]。このきまりを使うと、次のように考えられます(計算は筆者)。
- 7×8がわからないとき:7×7=49 に 7 をたして 56。
- 6×8がわからないとき:8×6 に入れかえ、8×5=40 に 8 をたして 48。
- 9の段:答えの十の位と一の位をたすと 9 になります(18 → 1+8、27 → 2+7、…81 → 8+1)。
思い出せないときの「手がかり」が増えるので、止まったときの助けになります。
家庭でできる対処法
ここからは、一般にいわれる工夫です。研究で効果が確かめられたものではありません。ベネッセの記事が示す対応策も、つまずきの場所をつかむ、苦手な段だけ繰り返す、楽しさや役立ち感をもたせる、という内容でした[3]。
1 どこで止まるかを見つける
テストやドリル、ノートを見て、どの式で止まっているかを確かめます[3]。紙に書き出したり、付箋に貼ったりすると、苦手な式が目に見えます。
2 苦手な式にしぼって、短く
全部をやり直すより、止まった式だけを短い時間で繰り返すほうが、負担が軽くなります。ベネッセの記事も「苦手な段だけでよい」としています[3]。たとえば、6〜8の段のうち、すでに言える段とかぶるものを除くと、のこるのは6通りです(図3)。「全部できない」ではなく「あと数個」と考えると、気持ちが軽くなります。
練習する個数を、1日に3個までなど、少なく決めておく方法もあります。時間を決めて取り組みたいときは、見てわかるタイマーがあると助かることもあります。
3 出題の順番を変える
「にいちがに」から順に唱えないと出てこない場合は、「7×8は?」と順番をばらして聞く練習もあります。ベネッセの記事でも、九九を逆の順番で使うときに覚え方が足りない場合がある、という趣旨のことが原因の一つに挙げられています[4]。
4 声かけは、責めずに具体的に
「なんで覚えてないの」ではなく、「7×8はあとちょっとだったね。もう一回やってみよう」のように、できているところを伝えます。これも一般にいわれる工夫です。
5 楽しさや「役立つ感」をそえる
ベネッセの記事は、リズムやゲーム、言葉遊び、買い物や料理など生活の中での使い方を通して、九九の「楽しさ」「面白さ」「役立ち感」を感じられるようにすることも対応策に挙げています[3]。たとえば「3個入りが4パックでいくつ?」と聞く、お風呂で1つの段だけ唱える、といったことです。覚える作業から、使って遊ぶ時間に変わると、苦手な気持ちが軽くなるお子さんもいます(一般にいわれることです)。
気になるときの相談先
九九が覚えにくいことだけで、特別な理由があるとはいえません。文部科学省の資料では、学習障害(LD)は、全般的な知的発達に遅れはないが、聞く・話す・読む・書く・計算する・推論するといった力のうち、特定のものの習得や使用に著しい困難を示すもの、と説明されています[7]。ただ、これは九九の様子だけで当てはめるものではなく、判断は専門家が行うものです。
まずは担任の先生に、授業での様子を聞いてみてください。文部科学省の資料には、特別支援教育コーディネーターが、保護者に対する学校の窓口の役割を担うと書かれています[8]。学校内の相談の窓口を、先生に聞いてみるのも一つの方法です。
よくある疑問
7の段だけ、どうしても言えません。
7の段は、調査でも習熟度が低めに出ている段です[2][3]。7の段の式のうち、7×1〜7×5は1〜5の段、7×9は9の段にも出てくる式です。1〜5の段と9の段が言えるなら、残るのは7×6、7×7、7×8の3つです(筆者の数え方)。そこだけ短く練習する方法があります。
6×8と8×6が、いつもごちゃごちゃになります。
報告書でも、この2つの式は誤答が多かったと書かれています[2]。入れかえても答えは同じ48なので、片方が言えたら、もう片方は入れかえて確かめる、という考え方ができます[6]。
1日にどのくらい練習すればいいですか?
時間や回数の目安を示した資料は確認できませんでした。短く区切って、「できた」と感じて終われる長さにしてください。
学年が上がっても、苦手なままです。
九九に時間がかかると、あとの学習にも影響が出ることがあります。学校の先生と様子を共有してください。九九の位置づけは九九はいつから?でも整理しています。
参考にした資料
- ベネッセ教育総合研究所「小学生の計算力に関する実態調査 2013」(調査時期:2013年2月下旬〜3月下旬、対象:全国の公立小学校15校の1〜6年生7,827名を確認)
- ベネッセ教育総合研究所「小学生の計算力に関する実態調査 2013 報告書」(2年生の乗法九九の結果の部分。正答率の低い段が6・7・8の段、乗数で注意が必要なのが4・7・8、最も多い誤答が6×8・8×6・6×7・7×6の式、「し」「しち」などの混同、言い間違いが原因と思われるとの考察を確認。表の数値はPDFの読み取りが安定せず、確認できませんでした)
- ベネッセ教育情報サイト「子どもの九九のつまずきをやさしくサポートする3つの対応策」(2025年10月6日公開。2025年7月に約1,240人を対象とした調査で、1・2・5の段は約90%以上が「すぐできた」「できた」、7・8・9の段は習熟度が低いこと、3つの対応策を確認。学年・調べ方・段ごとの%は記事に書かれていませんでした)
- ベネッセ教育情報サイト「九九の覚え方のコツは?つまずきの原因や間違えやすい段も徹底解説!」(誤答の多い九九に6・7・8の段が多いこと、つまずきの原因として挙げられた3点を確認。調査名・数字は記事に書かれていませんでした)
- ベネッセ教育情報サイト「九九をきっかけに算数が苦手にならないように 間違えやすい段の対策は?」(6・7・8の段が間違えやすいこと、4(し)と7(しち)の音の混同が原因として挙げられていることを確認。調査データは載っていませんでした)
- 学習指導要領ナビ.jp「【小学校 算数】第2学年の内容(A数と計算:乗法)」(平成29年告示の解説をまとめたサイト。乗数が1ふえると積が被乗数だけふえる性質や交換法則を使って乗法九九を構成することが書かれていることを確認)
- 文部科学省「学習障害(LD)、注意欠陥/多動性障害(ADHD)及び高機能自閉症について」(平成11年7月の報告からの抜粋ページ。LDの定義の文言を確認)
- 文部科学省「特別支援教育に関する資料(第1部 概論)」(特別支援教育コーディネーターが、保護者に対する学校の窓口としての役割を担うと書かれていることを確認。資料の発行年は確認できていません)
この記事について:上の資料のページを開いて、書かれている内容を確かめて書きました。2013年の報告書は、各式の正答率の表が読み取れなかったため、数字の棒グラフは作らず、本文の記述だけを使っています。2025年の調査は、元の調査ページではなくベネッセ教育情報サイトの記事で確認しており、学年や調べ方は確認できていません。「45通り」「6通り」は自分で数えた数字、きまりを使った計算も筆者の計算です。家庭の工夫は、研究で効果が確かめられたものではなく、一般にいわれる工夫です。医療・発達の専門家の監修は受けていません。気になる様子があるときは、学校の先生や専門機関にご相談ください。