子どもに勉強を教えるとイライラする・怒ってしまう…親の教え方のコツ
宿題を見ていると、同じところで何度も間違える。説明しても伝わらない。気づけば声が大きくなって、子どもは泣き出す。
そんな夜のあと、自分を責めてしまう方は少なくないと思います。
このページでは、勉強を教えている親がどのくらいいるかを調査で確かめ、怒ることや口出しについて研究でわかっていることを整理します。
そのうえで、イライラしにくい教え方の工夫を紹介します。研究の多くは海外のもので、日本の家庭にそのまま当てはまるとは限りません。
勉強を教えている親は、多い
ベネッセ教育総合研究所と東京大学社会科学研究所の調査では、保護者が「勉強の内容を教える」にあてはまると答えた割合は、小1〜3生で79.9%から83.4%に、小4〜6生で64.5%から70.3%に増えていました[1]。
多くの家庭で、親が先生役をしています。イライラするのは、あなただけではありません。
イライラしやすい場面
ここは研究にもとづく分類ではなく、筆者が整理した見方です。どの場面でイライラしやすいかが分かると、先に手を打ちやすくなります。
- 同じところで、何度も間違える。
- 説明しても、伝わっている感じがしない。
- 時間がない(夕食前、寝る前など)。
- 間違いを指摘すると、泣く・怒る。
- 夫婦で教え方が違い、口論になる。
研究でわかっていること
厳しい言葉のしつけは、あとの様子と関連していた
米国の両親のいる976家庭を調べた2014年の研究では、13歳の時点で、親が怒鳴る・言葉で傷つけるといった厳しい言葉でのしつけをしていると、13〜14歳の間に問題行動や抑うつ症状が増える関連がありました。
親が普段は温かく接していても、この関連は弱まりませんでした[2]。
対象は中学生ごろの年齢で、日本の小学生にそのまま当てはまるとは限りません。
また「関連」で、原因と結果をはっきり分けたものではありません。
それでも、「愛情があれば怒鳴っても大丈夫」とは言えない、という手がかりにはなります。
頼まれていない口出しが強いと、成績がやや低かった
ドイツの小学4年生335人を対象にした2023年の研究では、宿題での親の関わりを、「応答」(求められたら応じる)、「構造」(ルールを決める)、「干渉」(頼まれていないのに口出しする、罰で脅す)に分けて調べました。
干渉が強いほど、数か月後の成績がやや低い関連があり、逆に、成績が低いほど後で干渉が増える関連もありました[3]。
つまり、「成績が心配 → 口出しが増える → 成績が下がる」という悪い循環が起きている可能性があります。
親の「失敗の見方」は、子どもに伝わる
2016年に発表された研究では、失敗を「よくないもの」と見る親の子は、頭のよさは変わらないものだと考えやすい傾向がありました。
子どもは、親が知能をどう考えているかより、失敗をどう見ているかのほうを、よく感じ取っていたとされています[4]。
頭のよさより、取り組みをほめる
小学5年生を対象にした1998年の実験では、頭のよさをほめられた子は、失敗のあとに粘り強さと楽しさが下がる傾向がありました。
努力をほめられた子は、学ぶことへの関心が続く傾向がありました[5]。
イライラしにくい教え方の工夫
ここからは、上の研究や一般にいわれることをもとにした工夫です。効果が確かめられたものではありません。
- 答えではなく、ヒントを出す。「この数字は、どこから来たんだろう?」のように、考える手がかりだけ渡します。くわしくは宿題を一人でできる子になるためにへ。
- 子どもに説明させる。「どう考えたか教えて」と聞くと、どこでつまずいたかが見えます。親が説明を繰り返すより、イライラしにくくなります。
- 時間を区切る。「15分だけ一緒にやろう」と決めて、終わったら離れます。時間がない日は、無理に見ないのも一つです。
- 間違いは「惜しい」で受けとめる。失敗を責めるより、「ここまでは合ってるね」と、できたところから声をかけます[4]。
- 怒りそうになったら、いったん離れる。「ちょっとお茶を入れてくるね」と席を外すだけでも、言葉がきつくなるのを防げます。
- 丸つけは、子どもに任せる日をつくる。答えを見ながら自分で丸をつけると、親が「違う」と言う回数が減ります。
間違えると泣く・怒る子には
間違いを指摘されると、自分がだめだと言われたように感じる子もいます(筆者の考えです)。
「どこが違う」より先に、「ここまで一人でやったんだね」と取り組みを認めてから、1つだけ直す場所を一緒に探すと、受けとめやすくなります[5]。
泣いている最中は、教えても頭に入りにくいものです。落ち着くまで待ってから、続きをやりましょう。
夫婦で教え方が違うとき
やり方が違うこと自体は、悪いことではありません。
ただ、子どもの前で言い争うと、勉強の時間そのものが嫌になりかねません(筆者の考えです)。
「宿題を見るのは平日はママ、週末はパパ」のように担当を分ける、決めたルール(時間・場所)だけはそろえる、など、ぶつからない形を話し合っておくと楽になります。
教えるのがつらいときは、「教えない」選択も
中学生を対象にした50の研究をまとめた2009年の分析では、親の関わりは成績と正の関連がありましたが、宿題を手伝うことだけは例外でした。
もっとも結びつきが強かったのは、勉強の価値や将来について親子で話すことでした[6]。
小学生にそのまま当てはまるかは分かりませんが、「親が全部教える」ことだけが関わり方ではない、という手がかりになります。
分からないところは担任の先生に相談する、自動で丸つけや解説が出る教材を使う、など、親が先生役を少し降りる方法もあります。
よくある疑問
怒ってしまったあとは、どうすればいいですか?
落ち着いたら、「さっきは大きな声を出してごめんね」と伝えれば大丈夫です。
怒ってしまう日があっても、それで全部が台無しになるわけではありません。
次から、怒りそうな場面(時間がない夜など)を避ける工夫をしてみてください。
何年生まで勉強を教えたほうがいいですか?
決まった目安は、今回確認できませんでした。宿題への関わりと成績の関連は、学年によって違うという研究もあります[6]。
教える量を少しずつ減らし、見守る形に移っていくのが無理がないと考えられます(筆者の考えです)。
教え方の本を読んだほうがいいですか?
役に立つ本もありますが、本の方法がお子さんに合うとは限りません。
まずは、このページの「答えよりヒント」「時間を区切る」のように、1つだけ試してみるのがおすすめです。
参考にした資料
- ベネッセ教育総合研究所・東京大学社会科学研究所「子どもの生活と学びに関する親子調査2025 報告書」(図1-4-1で、小4〜6生の「学校の宿題」の時間が2015年44分、2025年30分で、回答者が子どもであること、図3-1-1で、保護者が「勉強の内容を教える」にあてはまる割合(小1〜3生79.9%→83.4%、小4〜6生64.5%→70.3%)を確認。)
- Wang, Kenny「Longitudinal Links between Fathers' and Mothers' Harsh Verbal Discipline and Adolescents' Conduct Problems and Depressive Symptoms」Child Development, 2014(米国の両親のいる976家庭、13歳時点の厳しい言葉でのしつけが13〜14歳の問題行動と抑うつ症状の増加を予測し、親の温かさはその関連を弱めなかったこと。検索結果の要約で確認し、論文本文はこの記事を書いた環境から開けなかった)
- Benckwitz, Kohl, Roloff, Lüdtke, Guill「Reciprocal relationships between parental and scholastic homework assistance and students' academic functioning at elementary school」Frontiers in Psychology, 2023(出版社ページで、ドイツの小学4年生335人、応答・構造・干渉の定義、親の干渉と成績の関連(−0.22、−0.16)、限界の記述を確認。)
- Haimovitz, Dweck「What predicts children's fixed and growth intelligence mind-sets? Not their parents' views of intelligence but their parents' views of failure」Psychological Science, 2016(出版社ページの要旨で、4つの研究と、親の失敗の見方が子どもの考え方と結びつくことを確認。人数・年齢は確認できていない。)
- Mueller, Dweck「Praise for intelligence can undermine children's motivation and performance」Journal of Personality and Social Psychology, 1998(Semantic Scholarの論文ページとIES(ies.ed.gov)の資料の要旨で、小学5年生、6つの実験、頭のよさをほめられた子と努力をほめられた子の結果のちがいを確認。)
- Hill, Tyson「Parental involvement in middle school: A meta-analytic assessment of the strategies that promote achievement」Developmental Psychology, 2009(ERICの登録ページの要旨で、中学生を対象にした50の研究、宿題を手伝うことだけが例外であること、勉強の価値などを話す「アカデミック・ソーシャライゼーション」が最も結びつきが強いことを確認。)
この記事について:[1][3][4][5][6]は、当サイトの他の記事で資料を開いて確かめた内容を使っています(それぞれの資料の説明を参照)。[2]は、検索結果の要約で確認しました。研究の多くは海外のもので、家庭の状況にそのまま当てはまるとは限りません。