勉強嫌いの子へ|やる気を引き出す声かけ・避けたい声かけ
毎日つい口にしてしまう「早く宿題やりなさい」。言う側も言われる側も、疲れてしまいますよね。このページでは、はじめにベネッセの調査で保護者の声かけの実態を確かめ、次に、ほめ方・ごほうび・選ばせ方についての研究でわかっていることを整理し、そのあとで家庭でできる工夫を紹介します。研究の多くは海外や学校・実験の場面のもので、日本の家庭にそのまま当てはまるとは限りません。「確かめられたこと」と「一般にいわれる工夫」を分けて書きました。
いま、保護者はどんな声かけをしている?
ベネッセ教育総合研究所と東京大学社会科学研究所の「子どもの生活と学びに関する親子調査2025」は、2015年から毎年、小学1年生から高校3年生の親子約2万組を対象に行われている調査です[3]。この調査で、保護者に、お子さんの勉強に対するかかわりを聞いています。小学4〜6年生の保護者で、「とてもあてはまる」「まああてはまる」を合わせた割合が図1です[1][2]。
「勉強しなさい」と言う保護者は、2025年は65.2%で、2019年の66.6%とほぼ同じでした。多くのご家庭で言っていることで、特別なことではありません。一方で、「勉強の面白さを教える」は48.8%から57.7%に増え、「テストの成績が悪いとしかる」は29.1%から25.2%に減っています。「結果が悪くても努力したことを認める」は91.6%でした。この調査は保護者が自分で答えたもので、実際の声かけの回数や言い方までは、数字からはわかりません。
研究でわかっていること
ほめる先で、子どもの様子が変わった
ミューラーとドゥエックが1998年に発表した研究は、小学5年生を対象にした6つの実験をまとめたものです。頭のよさをほめられた子は、うまくできたと見せる目標を重視しやすく、失敗のあとに粘り強さと楽しさが下がる傾向がありました。努力をほめられた子は、学ぶこと自体への関心が続き、うまくいくやり方の情報を求める傾向がありました[4]。
この研究は1998年のもので、その後の研究全体の評価まではこの記事では確認できていません。ほめ方を変えるだけで学力が上がる、という意味でもありません。また、別の研究(2014年、子どもを対象にした3つの研究)では、「きれい」より「ものすごくきれい」のように程度を大きくしたほめ方が、自己評価の低い子では、難しい課題を選びにくくなる結果でした[6]。ほめるときは、大げさにするより、具体的な取り組みを言葉にするのが無理がなさそうです。
物のごほうびは、やる気を下げることがある
デシらが1999年に128の実験をまとめた分析では、形のある物のごほうびは、自分から取り組みたい気持ち(内発的動機づけ)を下げる傾向があり、大学生より子どもで影響が大きいとされました。一方、言葉でのほめや前向きなフィードバックは、興味を高める結果でした(効果の大きさはおよそ0.3。ただし子どもでは大学生より小さい傾向)[5]。多くは実験室などでの課題を調べたもので、家庭の毎日の勉強とは条件が異なります。
選べると、やる気と成績が高かった
パタルらが2010年に発表した研究は、米国の高校生207人(9〜12年生)を対象に、同じ生徒が、2つの宿題から選べる単元と、決められた宿題をする単元の両方を経験する実験でした。選べた単元では、宿題への内発的なやる気と「できる」という感覚が高く、単元テストの成績もよく、宿題の完了率も高い傾向でした[7]。対象は高校生なので、小学生にも同じことが言えるかは、この資料からはわかりません。
保護者の「失敗の見方」が、子どもに伝わる
ハイモヴィッツとドゥエックが2016年に発表した研究は、親と子を対象にした4つの研究です。失敗を「よくないもの」と見る親は、子どもの能力や成績に目を向けやすく、そうした親の子は、頭のよさは変わらないものだと考えやすい傾向がありました。子どもは、親が知能をどう考えているかより、失敗をどう見ているかのほうを、よく感じ取っていたとされています[8]。人数などの詳細は、要旨からは確認できませんでした。
家庭でできる声かけの工夫
ここからは家庭での工夫です。研究で確かめられた部分は上で書いたとおりで、それ以外は、一般にいわれる工夫です。うまくいかない日があっても大丈夫です。
避けたい声かけ:比べる・決めつける
「なんでこんなこともできないの」「お兄ちゃんはできたのに」といった言葉は、できない部分への指摘や、きょうだいとの比較になりがちです。こうした言葉が成績に与える影響を直接比べた資料は、今回確認できていません。ただ、勉強そのものが嫌な時間にならないよう、図3のように、質問の形や、その子自身の前との比較に変えてみる方法があります。
結果ではなく、取り組みを認める
点数や正解の数だけでなく、「最後まで集中してたね」「前より字がていねいになったね」と、取り組みに目を向けてみましょう。上の研究[4]をふまえた工夫です。調査では、小学4〜6年生の保護者の91.6%が「結果が悪くても努力したことを認める」にあてはまると答えており[1]、すでにされているご家庭も多いようです。
選ばせて、自分で決めた感覚をつくる
「先に算数と国語、どっちからやる?」のように、やるかやらないかではなく、どちらを選ぶかを聞いてみてください。高校生での結果[7]を参考にした工夫で、小学生で確かめられたものではありません。
ハードルを下げる
「1問だけやってみよう」「5分だけやろう」と、小さな約束から始める方法もあります。取りかかってしまえば、そのまま続けられることもあります。これは一般にいわれる工夫で、効果を調べた研究は今回確認できていません。
保護者自身のやる気も、大切にしてください
毎日声かけを工夫するのは、保護者の方にも大きな負担です。うまく言えない日があっても、自分を責めすぎないでください。失敗を「次にいかせるもの」と見る姿勢が子どもにも伝わるという研究[8]をふまえると、親子で「今日はうまくいかなかったね、明日はどうしよう」と話せるくらいが、ちょうどよいのかもしれません。完璧を目指さず、できる日にできる声かけを。
よくある疑問
「勉強しなさい」と言ってはいけませんか?
禁止するものではありません。調査では、小学4〜6年生の保護者の65.2%が言うことがあると答えています[1]。「勉強しなさい」という言葉の効果そのものを直接調べた資料は、今回は確認できていません。気になるときは、「今日の宿題、何があるの?」のような質問に変えてみる方法があります。
ほめれば、必ずやる気が出ますか?
必ずとは言えません。研究で確かめられているのは、ほめる先(能力か、努力ややり方か)で子どもの様子が変わりうる、という範囲です[4]。
シールやお菓子のごほうびは、やめたほうがよいですか?
分析では、物のごほうびはやる気を下げる傾向がありましたが[5]、条件によって結果は変わり、家庭での使い方を調べたものではありません。「ごほうびのために勉強する」形になりすぎていないか、様子を見ながら使うのがよいでしょう。
学年が上がると、保護者のかかわりは変わりますか?
調査では、変わっていました。「勉強の面白さを教える」にあてはまる保護者は、2025年で小学1〜3年生62.1%、小学4〜6年生57.7%、中学生51.4%、高校生42.3%と、学年が上がるほど低くなっています。「テストの成績が悪いとしかる」は、順に15.8%、25.2%、31.8%、25.1%でした[1]。お子さんの成長に合わせて関わり方が変わるのは自然なことです。他のご家庭と比べるためではなく、傾向の参考として見てください。
勉強をとてもいやがる状態が続くときは?
勉強の話をすると強くいやがる、登校をしぶる、元気がない様子が続く、といったときは、家庭だけで抱えず、担任の先生やスクールカウンセラー、自治体の教育相談窓口に相談してみてください。この記事は診断や治療の助言ではありません。
参考にした資料
- ベネッセ教育総合研究所・東京大学社会科学研究所「子どもの生活と学びに関する親子調査2025 報告書」(図3-1-1で、保護者のかかわりの質問文(「調査の対象となっているお子様の勉強に対するあなたのかかわりについて、次のことはどれくらいあてはまりますか。」)、2019年と2025年の比較、回答者が保護者で「とてもあてはまる+まああてはまる」の合計であることを確認。小4〜6生の8項目のうち、図1に使った4項目の数字を確認。)
- ベネッセ教育総合研究所「子どもの生活と学びに関する親子調査2025」(調査時期が2025年7〜9月、保護者が20,331名、郵送依頼とWeb回答であることを確認。)
- ベネッセ教育総合研究所・東京大学社会科学研究所「「子どもの生活と学びに関する親子調査2015-2025」結果(ニュースリリース)」(調査の全体像を確認。この記事の数字は報告書のものを使用。)
- Mueller, Dweck「Praise for intelligence can undermine children's motivation and performance」Journal of Personality and Social Psychology, 1998(Semantic Scholarの論文ページとIES(ies.ed.gov)の資料の要旨で、小学5年生、6つの実験、頭のよさをほめられた子と努力をほめられた子の結果のちがいを確認。)
- Deci, Koestner, Ryan「A meta-analytic review of experiments examining the effects of extrinsic rewards on intrinsic motivation」Psychological Bulletin, 1999(梨花女子大学の研究成果ページの要旨で、128の研究、形のある報酬は子どもでより悪影響が大きい傾向、言葉の報酬の効果の大きさ(d=0.33、0.31)を確認。)
- Brummelman, Thomaes, de Castro, Overbeek, Bushman「"That's not just beautiful—that's incredibly beautiful!": The adverse impact of inflated praise on children with low self-esteem」Psychological Science, 2014(出版社ページの要旨で、3つの研究、大げさなほめ方で自己評価の低い子が難しい課題を選びにくくなったことを確認。人数・年齢は確認できていない。)
- Patall, Cooper, Wynn「The effectiveness and relative importance of choice in the classroom」Journal of Educational Psychology, 2010(論文PDFの参加者と方法の記述と、ERICの登録ページの要旨で、米国の高校生207人、単元ごとに条件を入れかえる実験、結果(内発的動機づけ、有能感、単元テスト、完了率の傾向)を確認。)
- Haimovitz, Dweck「What predicts children's fixed and growth intelligence mind-sets? Not their parents' views of intelligence but their parents' views of failure」Psychological Science, 2016(出版社ページの要旨で、4つの研究と、親の失敗の見方が子どもの考え方と結びつくことを確認。人数・年齢は確認できていない。)
この記事について:上の資料を実際に開いて、書かれている内容と数字を確かめて書きました。図1の数字は出典の値をそのまま写したもので、計算した数字はありません。
確認できていないことは次のとおりです。(1)ベネッセの報告書の図は、ページを開く道具を通して読み取りました。同じ数字を複数回読んで一致することは確かめましたが、PDFを画面で直接見てはいません。(2)研究論文は要旨を確認したもので、本文は開けていません。ミューラーとドゥエックの研究は、その後の再現や追試の評価を確認できていません。(3)「勉強しなさい」という声かけの効果そのものを調べた資料、きょうだいとの比較の影響を調べた資料、「1問だけ」「5分だけ」の効果を調べた資料。(4)日本の小学生の家庭での、ほめ方やごほうびの効果を調べた研究。専門家の監修は受けていません。診断や治療の助言ではありません。お子さんの様子が気になるときは、学校の先生や専門機関にご相談ください。内容に誤りがあれば、お知らせください。