書き順を間違えやすいひらがな|つまずきやすい字と、おうちでの見守り方
「き」の下の部分は、つなげるの? 離すの? 「ふ」の点は、どの順? ひらがなの書き順では、そんな迷いがよく出ます。このページでは、書き順や画数を間違えやすい字について、調べてわかったことと、わからなかったことを分けてまとめました。字ごとの順番と、間違いに気づいたときの見守り方も紹介します。
先に正直にお伝えすると、「この字が必ず間違えやすい」と言い切れる資料は見つけられませんでした。小さな調査をいくつか並べて、参考にする形になります。
調べでわかったこと:間違いは、めずらしくない
愛媛大学のグループが、保育所の幼児30名(4歳児8名、5歳児15名、6歳児7名)に、ひらがな10文字を見て書き写してもらい、書き順や画の向きを録画で調べた研究があります[1]。結果は、「字の形は合っているのに、書き方(ストローク)が違う」子が、「と」「け」「き」「よ」「さ」で多かった、というものです。6歳でも、大人と同じ書き方をするのが難しい場合があるとされています[1]。「ほ」では、5・6歳児に、右上の部分を「ま」の上のように突き出して書く間違いが目立った、という報告もあります[1]。
小学生の調査もあります。日本文教出版の指導資料の巻末に、ある小学校の中学年の児童90名を対象に、ひらがなの筆順の誤りを調べた結果が載っています[2]。誤りが多かった字として、「た」「き」「ほ」「も」などが並んでいました。ただし、このPDFは画像の読み取りで、%の数字が確かめきれなかったため、この記事では数字を書いていません[2]。
| 資料 | 対象 | 挙がった字・内容 |
|---|---|---|
| 愛媛大学の研究(2007年)[1] | 保育所の幼児30名 | 書き写しで筆順・画の向きが誤りやすい:と・け・き・よ・さ。「ほ」は右上の突き出し |
| 日本文教出版の指導資料(2018年)[2] | 小学校中学年の児童90名 | 筆順の誤りが多い:た・き・ほ・もなど(割合は未確認) |
| 明星大学の先生の文章[5] | 大学生(先生の実感) | 「れ」と「わ」、「や」と「ゆ」が読み取れない書き方をする人が少なくない |
この表で気づくのは、「き」が2つの調査に出てくることです。ただし、調査の対象や方法はばらばらで、1つの学校・1つの保育所の結果もあります。「ひらがな全体の傾向」とまではいえません。
字ごとのメモ:書き順と、迷いやすいところ
ここからは、このサイトの書き順データ(KanjiVG)にもとづいたメモです[6]。教科書のお手本とちがう場合は、学校のお手本を優先してください。図1のとおり、画数もこのデータの数え方です。
き・さ:横の画が先、下のカーブは最後
「き」は、横の画を2本書いてから、上から斜めに下りる縦の画、最後に下のカーブです(4画)。「さ」は、横、縦、下のカーブの3画です。どちらも、横の画を先に書く点が共通しています。
「き」は、先ほどの調査の3つの資料のうち、2つの資料に出てきた字です[1][2]。「き」「さ」は、画数や下の部分のつなげ方で迷う字でもあります(次の章で説明します)。
ふ:4つの画の順番に注意
「ふ」は4画で、上の短い画、本体の大きな曲がり、左の点、右の点の順です。点が2つあるので、左右が入れかわりやすい字です。なお、ここでの「入れかわりやすい」は、運営者の見立てで、誤りが多いと確かめた資料は見つかっていません。
ほ・は・け・た・も・よ:資料に挙がった字
「ほ」「は」「け」は、いちばん左の縦の画から書き始めます。「ほ」は4画で、縦、横、横、右の縦の画と曲がりの順です。右上の部分の突き出しに注意しましょう[1]。
「た」は4画で、横、縦(左払い)、横、最後に右下の曲がりの順です。調査で多く挙がった字ですが、どこで間違えたのかは、資料からは読み取れませんでした[2]。「も」「よ」も同じく、字が挙がっているだけで、間違いの中身はわかっていません。
ね・れ・わ・を:形が似ていて、迷いやすい
「ね」「れ」「わ」は、左の縦の画のあと、右の曲線の画で書く2画の字です。形がよく似ていて、2画目の終わりの形で書き分けます。「れ」と「わ」が読み取れない書き方になる、と述べる大学の先生もいます[5]。「を」は3画で、横、斜めの画、大きなカーブの順です。書き順の間違いというより、形の迷いが出やすい字といえそうです。
「ま」は、このサイトのデータでは3画(横、横、縦とカーブ)ですが、別の書き順サイトの解説では4画と数えていました[9]。同じ字でも、資料によって数え方が分かれる例です。学校の教科書のお手本で確かめてください。
画数・つなげ方で迷う字:さ・き・ふ・り・や
書き順の迷いには、「つなげるか、離すか」も関わります。ひらがなの字体について書かれた解説文に、「さ」「き」「ふ」「り」「や」は、明朝体では筆の流れでつながって見える部分が、教科書体では離れている、という説明があります[3]。同じ文章によると、この書き分けを文部科学省に問い合わせたところ、「こう書かなければいけない」という決まりはない、という回答だったそうです[3]。
また、「さ」「き」の字形について、筆順、画数、つなげるか離すかを、全国で多人数に調べた研究(ノートルダム清心女子大学、2021年)があります[4]。私が開けたのはこの論文の紹介ページまでで、結果の数字は確認できていません。ただ、「さ」「き」が、人によって書き方に幅のある字として研究されていることは確かです。
画数は、教科書体では「き」は4画、「さ」は3画とされます。このサイトのデータも同じです[6]。教科書体のお手本を使う別の書き順サイトの解説でも、「き」は4画、「さ」は3画、「ふ」は4画でした[9]。手書きで下をつなげて書いた字は、数え方が変わることがあります。
迷ったときの、4つのチェックポイント
字ごとに覚えるのが大変なときは、次の順で見直すと整理しやすくなります。運営者が、これまでの内容をもとにまとめた目安です。
- 学校のお手本の、数字の順番を見る。いちばん確かな基準です。
- 「上から下」「左から右」の大原則に合っているかを見る。
- 横の画と縦の画が組み合わさる字(き・さ・ま)は、横の画が先かを見る。
- 点や曲がりの画は、本体を書いたあとか、先かを見る。「ふ」は本体のあとに左右の点です。
それでも迷う字は、無理に1つに決めず、学校の先生に聞いてみましょう。
間違いに気づいたときの見守り方
ここからは、一般にいわれる工夫です。研究で効果が確かめられた方法ではなく、お子さんに合わせて試してみてほしい進め方です。
形を先にほめる
愛媛大学の研究でも、字の形は合っていても書き方が違う子が多くいました[1]。つまり、形が整っているのに順番だけ違う、ということはよくあります。まず「形がとてもいいね」と伝えて、順番はそのあと一緒に見ます。
空書きで順番を確かめる
横浜市教育センターの指導資料には、筆順の指導の工夫として、色で画を分ける、番号をふる、空書きをする、があげられています[7]。指で空中に書くと、鉛筆を持たずに順番だけ確かめられます。このサイトの練習ページで動くお手本を見てから、空書きしてみるのもおすすめです。
1回で直そうとしない
癖になった書き方は、1日では変わりません。1日に1字だけ、短く、を何日か続けるくらいで十分です。書き順をたくさん指摘されると、書くこと自体がいやになることもあります。できている画数をほめて、終わりましょう。
何度やっても同じところでつまずく、書くこと自体をいやがる、といった様子が続くときは、担任の先生や専門機関に相談してみてください。
よくある疑問
「き」は3画ですか、4画ですか?
このサイトのデータは4画で、別の書き順サイトの解説も4画です[6][9]。ただし、手書きで下の部分をつなげて書くと、3画に数えたくなることがあります。学校のお手本と、先生の指導にそろえるのが安心です。
「さ」は2画ですか、3画ですか?
このサイトのデータでは3画です[6]。手書きでは下をつなげて書く人もいて、そうした書き方も研究の対象になっています[4]。まずは、学校の教科書のお手本の書き方を基準にしてください。
学校で習った書き方と、このサイトのお手本がちがうのですが?
このサイトのデータは、全字を教科書と照らし合わせたわけではありません。学校で習った書き方を優先してください。気づいた点は、フッターのお問い合わせフォームから教えていただけると助かります。
書き順を間違えているのを、すぐ直すべきですか?
急ぐ必要はないと考えます。学校では筆順に従って書くことが目標のひとつですが[8]、お子さんが書くことを楽しんでいるうちは、気づいたときに、短い時間で見直すくらいで十分です。基本のルールは、ひらがなの書き順の基本ルールのページにまとめています。
参考にした資料
- 石川侑香・谷岡真衣・苅田知則「平仮名学習入門期の書字について~読み・聴写・視写の比較から~」愛媛大学教育学部紀要(2007年)(対象は幼児30名、10文字。「と・け・き・よ・さ」の誤り、「ほ」の右上の誤り、6歳でも誤りがあるという結論を確認。幼児・視写の研究で、小学生の結果ではない)
- 日本文教出版「書写ABC 筆順指導編」(平成30年11月。巻末の、中学年児童90名のひらがな筆順誤り調査で、「た・き・ほ・も」などが多いことを確認。スキャン資料で、割合の数字は読み取りが安定せず、使っていない)
- JapanKnowledge「日本語、どうでしょう? 第54回 ひらがなの字体にも違いがある」(2011年4月18日。さ・き・ふ・り・やで、明朝体でつながる部分が教科書体では離れること、文部科学省への問い合わせの回答を確認。筆者名は記事内に見当たらなかった)
- 尾崎喜光・家入博徳「手書きひらがなの字形に関する研究:「ささき」をどう書くか」『清心語文』第23号(2021年)(ノートルダム清心女子大学リポジトリの紹介ページで、さ・きの筆順・画数・つなげるか離すかを調べた全国調査であることを確認。本文PDFは開けていない)
- 古田島洋介「もはや漢字は御当地主義――筆順と画数をめぐって――」(明星大学。「れ」と「わ」、「や」と「ゆ」についての記述を確認。筆者個人の実感であり、調査ではない)
- KanjiVG(kanjivg.tagaini.net、© Ulrich Apel、CC BY-SA 3.0)(このサイトの書き順データの出どころ。図1・図2はこのデータの画の形と順番を使い、運営者が図に起こした。教科書のお手本と全字を照合したわけではない)
- 横浜市教育センター「書写指導サポートブック(令和5年7月)」(色分け・番号・空書きの指導の工夫を確認)
- 東京都教育委員会「小学校書写教科書の調査研究報告書(令和5年度)」(第1・2学年の目標に「筆順に従って丁寧に書くこと」があることを確認)
- KKJN「ひらがな「き」の書き順」ほか、同サイトの「さ」「ふ」「ま」のページ(教科書体のお手本で書き順を示すサイト。各ページで画数を確認:き4画、さ3画、ふ4画、ま4画。補助的な資料で、運営者の詳細は未確認)
この記事について:参考資料は、実際にページを開いて確認しました。ただし、尾崎・家入論文の本文と、日本文教出版の巻末調査の正確な数字は確認できていません。「ま・ふ・ね・れ・わ・を」は、ご家庭の関心が高そうな字として載せましたが、誤りが多いと示す資料は、今回の調べでは見つけられていません。字ごとの書き順と画数の説明は、このサイトのデータ(KanjiVG)を見て運営者が整理したもので、教科書のお手本と一致するかは全字では照合していません。表1の整理も運営者によるものです。専門家の監修は受けていません。内容に誤りがあれば、フッターのお問い合わせフォームからお知らせください。