小学生のタブレット学習|メリットと気をつけたいこと
学校でタブレットを使う場面が増え、家庭学習でもタブレット教材を考える方がいます。このページでは、学校の端末がどう整ったのか、子どもの視力の統計、画面を見る距離や休憩の目安、学習への影響についてわかっていることを、公的な資料などで確かめた範囲でまとめました。タブレットを「よい」「悪い」と決めるものではありません。
学校の「1人1台」は、どう整ったのか
小学校で使うタブレットなどの端末は、文部科学省の「GIGAスクール構想」で整えられてきました。目的は、一人ひとりに合った学び(個別最適な学び)と、友だちと協力する学び(協働的な学び)を実現することとされています[1]。令和元年度(2019年度)の補正予算額は2,318億円で、1人1台の端末と学校の高速通信ネットワークを整える内容でした[2]。
どのくらい増えたのでしょうか。文部科学省の調査では、全国の公立学校の児童生徒1人あたりの学習者用コンピュータは、平成31年3月に0.2台、令和7年3月1日現在で1.1台です[3]。公立小学校だけで見ても1.1台でした[3]。なお、パソコン型とタブレット型の内訳は、この記事では確認していません。
ここで気をつけたいのは、これは学校の端末の整備状況だということです。家庭で使うタブレット教材の効果や安全性を示す数字ではありません。教材は商品やサービスによって内容がちがうので、この記事では個別の教材には触れません。
子どもの視力は、いまどうなっているか
文部科学省の「学校保健統計調査」は、満5歳から17歳までの幼児・児童・生徒の一部を抽出して行う調査です。令和7年度は、令和7年4月1日から6月30日の間に実施されました。健康状態調査の抽出率は、全体の25.4%(3,143,588人)でした[5]。
令和7年度の「裸眼視力1.0未満の者」の割合は、次のとおりです(かっこ内は前年度の令和6年度)[5]。
- 幼稚園 23.90%(26.53%)
- 小学校 36.07%(36.84%)
- 中学校 59.35%(60.61%)
- 高等学校 71.51%(71.06%)
公表資料には、学校段階が進むにつれて割合が高くなっており、小学校で3割を超え、中学校で6割程度、高校で7割程度、と書かれています[5]。小学校の年度ごとの値は、図2のとおりです。
読むときの注意が2つあります。1つめは、令和2年度から令和5年度の数字は、調査時期の異なる数値を含むため、他の年度とは比べられないと資料に注記されていることです[5][6]。2つめは、この数字は視力検査の結果であって、近視かどうかの診断ではないこと、そして、この統計だけではタブレットが理由かどうかはわからないことです。
画面を見るときの目安(公的な資料より)
文部科学省の「児童生徒の健康に留意してICTを活用するためのガイドブック」(令和4年3月改訂版)は、学校の先生向けの資料です。家庭でも参考になる目安が、次のように書かれています[7]。
- 距離:目とタブレットの画面は、30cm以上離す。
- 休憩:30分に1回は、20秒以上、画面から目を離して遠くを見る。
- 姿勢:背中を伸ばす、床に両足をつける、深く腰かける、目線を画面に直交する角度に近づける。机と椅子が体に合っていないと姿勢が悪くなるため、高さを調整する。
- 明るさ:暗いところや極端に明るいところで画面を見ると、目の疲れを早める可能性がある。
- 長さ:長時間見続けると、眼精疲労やドライアイを生じる可能性があるため、画面を見続ける学習時間が一度に長くならないようにする。
- 寝る前:寝る直前まで使うと寝つきが悪くなる恐れがあるため、就寝前1時間は控える。
同じガイドブックには、仕事で情報機器を使う人向けの厚生労働省のガイドラインでは、集中的な作業の連続時間は1時間を超えないようにするとされている、という紹介もあります。そのうえで、子どもには30分に1回の休みを意識するようすすめています[7]。
日本眼科医会の2023年5月の報道向け資料にも、画面と目を30cm以上離すこと、30分画面を見たら1回は20秒以上遠くを見ること、毎日外で120分以上活動することが挙げられています。また、1日約2時間程度の屋外活動には近視を抑える効果がみられる、とも書かれています[8]。
日本小児科医会が2004年に出した提言もあります。テレビやゲームなどすべてのメディアに触れる総時間は1日2時間までを目安、テレビゲームは1日30分までを目安とする内容です[9]。乳幼児から思春期までを対象にした提言ですが、20年以上前のもので、おもにテレビ・ビデオ・ゲームを念頭に書かれています[9]。学習用のタブレットの使い方を決めたものではないので、参考として知っておく程度で十分です。
今回確認した資料の範囲では、小学生のタブレット学習について「1日○分まで」と決めた公的な数字は見つけられませんでした。見えにくそうにしている、目が疲れやすそうなど気になることがあれば、眼科や学校の先生に相談してください。
学習への影響について、わかっていること
「タブレットで学ぶと成績が上がる(下がる)」と言い切れる単純な答えは、今回確認した範囲では見つかりませんでした。ここでは、範囲を限って確かめられた研究を2つ紹介します。
紙と画面で読むとき
Delgadoらの2018年の研究は、同じような文章を紙とデジタル機器で読んだときの理解を比べた、過去の研究のまとめ(メタ分析)です。2000年から2017年の研究を集め、参加者の違いを比べた研究38件と、同じ参加者で比べた研究16件が対象で、参加者は合わせて171,055人でした。研究のやり方がどちらの場合も、紙で読んだほうがやや理解が高い結果で、効果の大きさは−0.21(Hedgesのg)と報告されています[10]。
差が大きく出たのは、読む時間に制限があるときと、説明文などの情報を伝える文章のときです。物語文だけの研究では、差が確認されていませんでした[10]。ただし、これは「読む」場面の研究です。対象の年齢の内訳は確認できておらず、タブレット学習全体の良し悪しを示すものでもありません。
授業中に気が散るか
OECDのPISA2022では、日本の高校1年生相当の約6,000人が参加しました。数学の授業の雰囲気について、「他の生徒がデジタル・リソース(スマートフォン、ウェブサイト、アプリなど)を使っているために気が散っている」と答えた生徒は、日本が4.0%、OECD平均が30.4%でした。日本の教科の授業でのICT利用は、OECD諸国と比べて低いという記述もあります[11]。
この調査は15歳前後が対象で、授業中の気の散りやすさを聞いたものです。小学生の家庭学習にそのまま当てはめることはできません。国や学校での使い方の違いも含まれた数字です。
なお、自動で丸つけが出る、動画や音声で説明する、といった機能は、多くのタブレット教材にある特徴です。ただ、その機能で学力がどう変わるかを調べた研究は、今回は確認できていません。
家庭でできる工夫
ここからは、家庭で試しやすい工夫です。上で紹介した公的な目安は数字を示しますが、家庭での進め方は、研究で効果が確かめられたものというより、一般にいわれる工夫です。お子さんによって合う方法はちがいます。
工夫1:使う時間を区切る
目安は、30分に1回、20秒以上遠くを見ることです[7]。キッチンタイマーやタブレットのタイマーで30分を区切り、窓の外を見る習慣にすると続けやすくなります。寝る1時間前には終えるよう、学習の時間帯を決めておくのもひとつの方法です[7]。
工夫2:姿勢、距離、明るさを整える
机と椅子の高さが合っているか、足が床についているか、画面から30cm以上離れているかを、最初に一緒に確認します[7]。部屋は暗すぎず、極端に明るすぎないようにします[7]。
工夫3:使うアプリと約束事を決める
動画や他のアプリなど、学習以外のものが入り込むこともあります。使える時間と、使うアプリを先に決めておくと安心です。最初の1週間ほどは、お子さんが使う様子をそばで見て、使いにくい操作や集中が切れるタイミングを確かめてみてください。文部科学省は、ご家庭向けの啓発リーフレットも公開しています[12]。
工夫4:紙と使い分ける
計算練習はタブレットでくり返し、漢字や筆算は紙とえんぴつで書く、というように使い分けるご家庭があります。長めの説明文は紙で読む、という選び方も考えられます[10]。お子さんの様子を見ながら、ちょうどよい割合を探してみましょう。
工夫5:外で体を動かす時間をつくる
日本眼科医会の資料では、毎日外で120分以上活動することが挙げられています[8]。無理のない範囲で、外遊びや散歩の時間をとってみてください。
よくある疑問
タブレット学習で、視力は下がりますか?
今回確認した資料からは、断定できません。学校保健統計は視力の割合を示すもので、タブレットとの関係を調べたものではありません[5]。ガイドブックは、長時間見続けると目が疲れる可能性があるとして、距離・休憩・姿勢の目安を示しています[7]。気になるときは、眼科で相談してください。
1日に何分までなら大丈夫ですか?
小学生のタブレット学習について、公的に決められた1日の上限の数字は、今回確認できませんでした。確認できたのは、30分に1回は20秒以上遠くを見る、という区切り方の目安です[7]。
画面は、どのくらい離せばよいですか?
文部科学省のガイドブックも日本眼科医会の資料も、30cm以上としています[7][8]。
紙とタブレットは、どちらがよいですか?
どちらかに決める必要はありません。紙と画面で文章を読む理解を比べた研究では、紙がやや有利でしたが、それは「読む」場面に限った結果です[10]。計算練習など、ほかの場面の比較は確認できていません。お子さんに合う組み合わせを探してください。
学校の端末と、家庭のタブレットは同じ扱いでよいですか?
目の使い方の目安は、どちらの端末でも同じように参考になります[7]。ただし、学校の端末の使い方は、学校のきまりや先生の指示を確認してください。家庭の端末は、各ご家庭で時間やアプリの約束を決めておくと安心です。
参考にした資料
- 文部科学省「GIGAスクール構想について」(GIGAスクール構想の目的が、個別最適な学びと協働的な学びの実現と書かれていることを確認。)
- 文部科学省「GIGAスクール構想の実現(令和元年度補正予算・令和2年度第1次補正予算を合わせた全体像)」(1人1台端末と学校の高速通信ネットワークの整備を目指すこと、令和元年度補正予算額が2,318億円であることを確認。整備の期限は、この資料には書かれていなかった。)
- 文部科学省「令和6年度学校における教育の情報化の実態等に関する調査結果(概要)〔確定値〕」(令和7年10月)(令和7年3月1日現在、全国の公立学校で児童生徒1人あたり1.1台(公立小学校も1.1台)。平成31年3月から令和7年3月までの7時点の推移の値を確認。)
- 文部科学省「GIGAスクール構想に関する各種調査の結果(令和3年8月)」(令和2年3月1日時点で6.6人に1台、令和3年3月1日時点で1.4人に1台という値を確認(図1の照合用)。)
- 文部科学省「令和7年度学校保健統計(学校保健統計調査の結果)について」(令和8年2月13日公表)(裸眼視力1.0未満の割合(幼稚園・小学校・中学校・高校の令和7年度と令和6年度の値)、調査対象(満5〜17歳の一部の抽出)、実施期間(令和7年4月1日〜6月30日)、抽出率、小学校の年度別の値、令和2〜5年度の注記を確認。)
- 文部科学省「令和6年度学校保健統計(学校保健統計調査の結果)確定値」(令和7年2月公表)(小学校の平成26年度・平成30年度・令和元〜6年度の値と、令和2〜5年度の注記を確認(図2の照合用)。)
- 文部科学省「児童生徒の健康に留意してICTを活用するためのガイドブック(令和4年3月改訂版)」(目と画面の距離30cm以上、30分に1回は20秒以上遠くを見る、姿勢、机と椅子、明るさ、長時間の注視、就寝前1時間、厚生労働省のガイドラインの紹介(連続作業時間は1時間を超えない)の記載を、ページ番号つきで確認。)
- 日本眼科医会 丸山耕一理事「ICT教育と目の健康啓発活動」(第24回日本眼科記者懇談会 報道用資料、2023年5月18日)(画面と目を30cm以上離す、30分に1回は20秒以上遠くを見る、毎日外で120分以上活動する、1日約2時間程度の屋外活動に近視抑制効果がみられる、という記載を確認。)
- 日本小児科医会「子どもとメディア」対策委員会「「子どもとメディア」の問題に対する提言」(2004年2月6日)(メディアに触れる総時間は1日2時間までを目安、テレビゲームは1日30分までを目安、という提言の項目と、乳幼児から思春期までを含む提言であることを確認。)
- Delgado, Vargas, Ackerman, Salmerón「Don't throw away your printed books: A meta-analysis on the effects of reading media on reading comprehension」Educational Research Review, 25, 23-38(2018年)。論文情報はバレンシア大学の研究成果ページ、要旨(abstract)はテクニオン(イスラエル工科大学)の研究成果ページ(題名・掲載誌・年、および要旨に書かれた研究の数・参加者数・結果(Hedges' g = −0.21)を確認。論文の本文は開けていない。)
- 文部科学省「OECD生徒の学習到達度調査 PISA2022のポイント/結果(概要・詳細)」(調査対象(日本は高校1年生相当の約6,000人、2022年6〜8月)、「他の生徒がデジタル・リソースを使っているために気が散っている」と答えた生徒の割合(日本4.0%、OECD平均30.4%)、日本の教科授業でのICT利用頻度がOECD諸国より低いという記述を確認。)
- 文部科学省「端末利用に当たっての児童生徒の健康への配慮等に関する啓発リーフレット」(2021年4月)(保護者用のリーフレット(「ご家庭で気をつけていただきたいこと」)が公開されていることを、掲載ページで確認。リーフレットの中身は確認できていない。)
この記事について:上の資料を実際に開いて、書かれている内容と数字を確かめて書きました。図の数字は、すべて出典の値をそのまま写したものです。自分で計算したのは、図1の照合で「6.6人に1台」「1.4人に1台」を1人あたりの台数に直しておおまかに見比べた点だけです。学校保健統計の値と、学習者用コンピュータの台数の推移は、複数の資料で照らし合わせました。
確認できていないことは次のとおりです。(1)家庭学習用のタブレット教材の効果や安全性を調べた研究。(2)小学生に限った、紙と画面の学習効果の比較。紙と画面の研究(Delgadoら)は、要旨だけを確認し、論文の本文は開けていません。(3)タブレットの利用と視力・近視との関係を調べた調査。文部科学省の「児童生徒の近視実態調査」は、公表ページは確認しましたが、報告書の本文は開けなかったため、数字を使っていません。(4)厚生労働省のガイドラインの原文と、保護者向け啓発リーフレットの中身。(5)小学生のタブレット学習の1日の上限時間を定めた公的な数字。
この記事は、運営者が一般的な情報をもとにまとめたもので、医療・教育の専門家による監修は受けていません。診断や治療の助言ではありません。お子さんの目や体調が気になるときは眼科などの医療機関に、学習の進め方は学校の先生にご相談ください。内容に誤りがあれば、お知らせください。